難治性足潰瘍

難治性足潰瘍・壊死の治療には外科的処置のみならず血行再建、血糖値のコントロール等が必要です。そのため治療には、形成外科だけでなく、内科、循環器内科、血管外科など複数の診療科の協力が重要となります。帝京大学医学部付属病院では形成外科、循環器内科、血管外科、糖尿病内科、腎臓内科の医師によるフットケアチームを形成し、毎週カンファレンスを行なって各科連帯のもとで難治性足潰瘍の治療を行っています。できる限り歩行機能の温存に努めています。形成外科では難治性足潰瘍・壊死の患者さんが北区、板橋区を中心に埼玉県、豊島区、新宿区などから紹介受診され加療しています。

難治性足潰瘍・壊死の原因で多いのは、閉塞性動脈硬化症(足の動脈の閉塞)と糖尿病です。閉塞性動脈硬化症は足の血管が詰まることにより、足に壊死を生じます。糖尿病性足潰瘍は神経障害(知覚神経障害、自律神経障害、運動神経障害)、血流障害、感染を原因に発症します。知覚神経の障害により、足の外傷に気がつかず、通常の歩行をし続けることにより外傷が悪化します。また、自律神経障害により、体温調整として働いている末梢細動脈―細静脈シャントに機能不全よる局所血行障害・代謝障害が惹起され皮膚の血流低下を招き、足底潰瘍が発生します。さらに高血糖状態により免疫能が低下し、感染症が重篤化しやすくなります。そのため糖尿病性足潰瘍は、悪化した状態で気付かれることが多く、骨髄炎を合併した状態で来院されることがあります。

当科で行う血流検査

足関節上腕血圧比(ankle brachial pressure index:ABI) :足部の血圧と、上腕の血圧を同時に測定し、それらの比を求めた値です。0.9以下の場合には虚血の存在が疑われます。
皮膚灌流圧(skin perfusion pressure:SPP):レーザードップラーセンサーと脈波プローブの両方が装着された血圧カフを用いて測定します。SPPが30~40mmHg以下の場合は創傷治癒に十分な血流がないと判断されます。
その他、3DCT、MRI等を必要に応じて行います。

血管の閉塞が疑われる場合には、当院循環器内科や心臓血管外科にて血管カテーテル治療、血管バイパス手術などを行い、血流を改善させます。その後、壊死組織の除去や趾の切除を行い、陰圧閉鎖療法(組織を持続的に陰圧吸引し肉芽を盛り上げるのを促進する)、植皮術などを行って、傷を治癒させます。